舞台の記録映像、私はこの4つを先に決めます

はじめまして。株式会社CREATE-Linksの大原誠弍(おおはら せいじ)と申します。映画の監督・脚本を書きながら、俳優として舞台にも立っています。

舞台の記録映像について、ご相談をいただくことが増えました。ただ、お話をうかがっていると、「とりあえず撮っておいてください」という形で発注され、あとになって「これでは使えなかった」と気づかれるケースが少なくないようです。

記録映像は、撮り直しができません。公演は一度きりだからです。

この記事では、私が現場で実際に決めていることを4つ、お話しします。あわせて「なぜ私がそう考えるのか」も書きました。どこの誰が言っているのか分からない話より、そのほうが判断していただきやすいと思うからです。

その前に ─ 私がどこに立ってきたか

私は舞台に立つ側の人間です。2010年ごろから、三越劇場「リア王」、靖国神社の奉納野外劇「俺は、君のためにこそ死ににいく」、東京二期会オペラ「オテロ」、NHKホールオペラ「ラ・ボエーム」など、大きな舞台から小劇場まで出させていただきました。近年ではJOE Companyさん、劇団不協和音さん、A.R.P.さんの公演にも出ています。

同時に、カメラの前にも立ってきました。NHK大河ドラマは「天地人」「龍馬伝」「江」「平清盛」「八重の桜」「軍師官兵衛」「花燃ゆ」「真田丸」「おんな城主 直虎」と続き、連続テレビ小説「とと姉ちゃん」、「相棒」「HERO」「小さな巨人」「大奥」などにも出演しています。

そして裏方でもあります。映画「風が通り抜ける道」ではチーフ助監督、「ふたりごっこ」ではラインプロデューサー、「ひとつに会える街」では助監督。自分の作品としては、映画「虹、結」で企画・脚本・監督・編集を担当し、2024年にイオンエンターテイメント系列で劇場公開しました。舞台「あなたがいたから」(2026年/シアターシャイン)は自社で製作し、記録映像も自分たちで撮っています。

長々と並べてしまいましたが、お伝えしたいのはひとつだけです。私は、撮る側・撮られる側・つくる側の三つを、同じ現場で行き来してきました。これから書く4つは、その中で「決めておかないと痛い目を見る」と身にしみたことです。

1. その映像を、あとで何に使うのか

いちばん先に決めるのはここです。用途によって、撮り方そのものが変わります。

  • 記録用:出演者や制作陣が見返すため。舞台全体が途切れず映っていることが最優先
  • 配信用:お客様がお金を払って観るもの。表情が見えること、音が聴きやすいことが要る
  • 宣伝用:次の公演やオーディションに使う短い映像。良い瞬間だけを抜き出す
  • 審査・申請用:助成金の報告や、劇場・団体への提出。指定された形式に合わせる必要がある

この4つは、カメラの位置も編集の仕方も違います。「記録用に撮ったものを、あとで宣伝にも使いたい」と後から言われても、素材が足りないことがあります。複数の用途があるなら、最初に全部おっしゃってください。撮り方を最初から組み立て直せます。

2. カメラは何台にするか

「1台で十分」と思われがちですが、台数で出来上がりは大きく変わります。

1台(客席後方から全景)——舞台全体が途切れず残ります。ただし表情は分かりません。記録として最低限の形です。

2台(全景+寄り)——ここから「観られる映像」になります。全景で位置関係を押さえ、寄りで芝居の表情を拾う。配信や宣伝に使うなら、実質ここが下限だと私は考えています。

3台以上——上手・下手の動きが激しい演目、群像劇、ダンスが入る作品で効いてきます。切り返しができるので、映像としてのリズムが生まれます。

私は、固定で置くカメラは無人で回す設計にしています。人を張り付けなくても成立する構図をあらかじめ決めておけば、台数を増やしても現場の人数が増えません。台数のご相談は、ご予算のご相談とセットでできます。

3. ゲネプロと本番、どちらを本使いにするか

意外と決まっていないのがこれです。

ゲネプロは、客席にお客様がいません。カメラを舞台の近くに置けますし、通路に立つこともできます。画としては自由度が高い。ただし客席の熱がないぶん、芝居の温度が本番とは違います。これは、出る側に立ったことのある人間なら誰でも実感しているところだと思います。

本番は、その日の空気がそのまま入ります。笑い声も拍手も残る。ただしカメラの置き場所は、客席の邪魔にならない範囲に限られます。

私がおすすめしているのは、ゲネプロと本番の両方を撮り、本番を軸にゲネプロの画を足す組み立てです。本番で撮り逃した角度を、ゲネプロの素材で補えます。どちらか一方しか撮っていないと、これができません。

4. どこからどこまでを入れるか

最後に、意外と揉めるのがここです。

  • 開演前の影アナウンスは入れるか
  • カーテンコールはどこまで入れるか(1回目まで/全部/ご挨拶も)
  • 幕間はカットするか、そのまま残すか
  • 客席は映してよいか(お客様のお顔が映り込みます)

とくに客席は、あとから問題になりやすいところです。配信をされるなら、客席が映り込まない画角をあらかじめ決めておく必要があります。撮ってから「消してください」は、できないことがあります。

私がいちばん大事にしていること

技術的な話を4つ書きましたが、私が本当に大事だと思っているのは別のところにあります。

私は舞台に立つ側にもいるので、役者が「ここは自分の顔を撮ってほしい」と願う瞬間が、どこにあるか分かります。台詞のない場面で、じっと相手を見ている数秒。袖に入る直前の表情。そこを外した記録映像は、本人が見返したときに寂しいものになります。

演出をされる方には、その作品でいちばん見せたい瞬間があります。役者には、残しておきたい瞬間があります。その両方を分かったうえでカメラを置けることが、私がお引き受けする一番の理由です。

決まっていない段階で、ご相談ください

ここまで4つ挙げましたが、「そこまで考えていなかった」という段階でご相談いただいて構いません。脚本を読ませていただき、稽古の流れをうかがえば、どこに寄るべきかは見えてきます。決め方からご一緒します。

撮影のみ、編集のみのご依頼にも対応しています。ご相談とお見積りは無料です。公演の日程が決まった段階で、お早めにご連絡ください。会場の条件によっては、下見をさせていただくこともあります。

映像制作のご相談はこちら / 映像制作のページを見る / 出演作品の一覧

大原誠弍(おおはら せいじ) 映画監督/俳優/ナレーター。株式会社CREATE-Links 代表取締役。1980年10月9日生まれ、静岡県出身。自社製作映画「虹、結」(企画・脚本・監督・編集)、「ハッピーは、すでに」(脚本・監督・主演)。映画「風が通り抜ける道」チーフ助監督、「ふたりごっこ」ラインプロデューサーほか。NHK大河ドラマ、連続テレビ小説、三越劇場、靖国神社奉納野外劇などに出演。→ 全出演作品はこちら

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です